Oct 19, 2010

デンドロビュームの花芽分化

ノビル系デンドロビュームの花芽分化の方法についてまとめてみたいと思います。

ノビル系のデンドロビュームの花芽分化をさせるためにはどのような条件が必要なのか数字的に示すと次のとおりです。


デンドロビュームの花芽分化の条件

夜間の最低気温が14度以下の低温に延べ日数で20回から25回くらい当てると完全に花芽分化して花が咲く準備ができます。
この花芽分化に必要な14度以下の低温に当てる場合、一回の時間は比較的短時間で良いのです。例えば明け方の冷え込みで3時間くらい14度に下がっても1回と考えます。
この温度管理によって花芽分化が起こるのです。


このノビル系のデンドロビュームについてずいぶん昔には自生地の条件から低温乾燥状態にすれば花芽が付くとされていました。
しかしこれは誤りで、低温時に鉢に中が湿っていると根傷みを起こし株を痛めるため必然的に乾かし気味の管理が必要ですが、乾燥状態が花芽をつける根拠はなく 、低温に当てる以外には花芽分化を起こさせる方法はありません。低温だから水を必要としないのです。


※近年、山本デンドロビューム園が育種改良して開発したヒメザクラやスプリングドリームの系統は、低温処理をしなくても花芽分化が可能な品種として世界的な注目を浴びています。


花芽分化のために低温に当てる際に注意したいポイントがあります。

■確実にバルブ(茎)が充実、完熟していること

これが大前提です。バルブ(茎)が充実していない場合は引き続き加温栽培し、バルブ(茎)の充実を図ります。窒素過多でバルブの色が青々としている場合も色が抜けて飴色に近くなるまで加温栽培を続けたほうが花付きが良くなります。
未熟な株をいくら低温に当てても花は咲きません。秋に低温に当てる場合、殆どの失敗する原因はバルブ(茎)が未成熟なことにあります。
デンドロビュームを低温に当てるか否かを判断する方法は以下の投稿に詳しく解説しています。
http://yamamotodendrobiums.blogspot.com/2010/10/blog-post.html


充実したバルブ(茎)


むやみな乾燥は避け

低温処理中は必然的に乾かし気味の管理になりますが、乾燥させることが花芽分化を起こすわけではありません。花芽分化に乾燥を必要としないことは山本二郎の栽培研究により明らかにされています。
バルブ が萎びるまで潅水を控えると良いなどと言われることもあるようですが、無理な乾燥は葉を落とし、いざ開花させようという時に良い花が咲きません。落葉してしまうと水の吸い上げが悪くなり、鉢の中が乾きにくくなり、根を痛めて蕾の段階で黄変することもあります。
低温に当てている間とはいえ乾きすぎには注意が必要です。
花が咲くべきバルブ(茎)にあまりにもシワが出るような場合は水も必要です。
一方で昨年伸びた古い茎(バッ クバルブ)のシワはすぐに元に戻るので心配ありません。

戸外で低温に当てているデンドロビューム

低温処理中ですが瑞々しさを保っています



正確な温度を測ること

低温に必要なのは14度以下の温度で充分です。
ただしご自宅で低温に当てる際にお手持ちの温度計で測る場合は、温度計の誤差や計測する環境によって必ずしも正確でない場合があります。また天気予報の発表する最低気温がご自宅周辺の気温と全く同じとは限らないためそのまま鵜呑みにするのは心配です。
低温の回数を調べる場合は14度ぎりぎりの温度ではカウントせずに確実に14度を下回る日のみをカウントしたほうが無難です。
園芸店やホームセンターで入手できる最高最低温度計なら毎日の最高最低の値を確認することができます。

最高最低温度計



極端な低温には注意

デンドロビュームは低温非常に強いランです。乾燥気味に管理すれば0度まで大丈夫ですが、実際に栽培する場合はこのような極端な低温に当てる必要はありません。
極端な低温は株を痛め、葉を落とす原因になります。湿った状態で温度が下がると一日にして根を痛め株をダメにすることもあります。
戸外で栽培している場合、最低気温が4度や5度になったら室内での管理に変えたほうが無難です。外気温が4度や5度に下がるような場合は、室内でも充分低温に当てることが可能です。
さらに気温が5度以下になるような条件下では霜にも注意が必要です。
霜にさらされると葉が痛み落葉しますし、最悪の場合株そのものがだめになる場合もあります。


以上のことが花芽分化の条件と注意点になります。


いつも霜が降りる直前まで冷やしたり、シワシワになるまで乾燥させたりしていた方には少し物足りなく感じられるかもしれませんが、これらの理論を証明する良い実例があります。

山本二郎は1973年、ハワイ島に山本デンドロビューム園ハワイ農場を開設しましたが、実はこのハワイ農場はハワイ島の海抜400メートルの場所にあり、冬期の最低気温は14度です。最低気温がそれ以下に下がることはありません。
それにもかかわらず毎年美しいデンドロビュームを咲かせています。
自らの理論をハワイ農場にて実践したわけです。

以下の写真は約30年前のハワイ農場設立間もない時の様子です。
品種は古く、今よりも花が付きにくかったであろうにもかかわらず見事な開花状況です。


満開のハワイ農場(1970年代後半)

山本二郎とハワイ農場のマネージャー市原氏(右端)


このハワイ農場の例から考えても霜が降るほどの低温に当てる必要がないことがわかります。

どうか花芽分化の条件を参考にして良い花を咲かせてください。