May 31, 2011

止め葉が出た。新芽が伸びない?

「この冬買った苗の新芽にもう止め葉が出てきました。これ以上伸びないのでしょうか。」
このような質問をいただきました。

弊社でこの冬に購入いただいた場合、品種によっては温室での栽培から一般家庭へ移行したことで温度管理の違いから、生育サイクルにズレが生じていると考えられます。
真冬とはいえ昼間25度以上、夜間18度近くに保たれた育苗温室から一般家庭の無加温の環境に移るわけですから、既に勢い良くスタートし伸びつつあった新芽はさぞかし驚いたはずです。


止め葉とはっきりとわかる株


一般家庭におけるデンドロビュームの生育のサイクルは、バックバルブ咲き、新バルブ咲きにかかわらず、毎年春になると親バルブの株元から新芽が伸びてきて、春から夏にかけて生長し、秋までにバルブを完成させるのが通常です。そして秋から冬にかけては休眠期、花芽分化を経て春先から開花。再び新芽のスタートと繰り返されます。
園芸書や専門書にも今から生育期と書かれているのでおかしいと思われたのでしょう。


一般家庭であれば、この時期は通常このような状態で葉が展開していることと思います。



まだまだ伸びます



しかし、弊園の様に営利でデンドロビュームを栽培する業者の場合、早いものは11月、そして年末から春にかけてデンドロビュームを開花させるような温度管理のもとで育つ苗は一般家庭における生育のサイクルで育つ苗よりも、よりも半年近く生育が早く進んでいるといってよいでしょう。

新芽のスタートは早いものは12月の上旬、おそくとも1月後半にいずれの株も新芽をスタートさせる必要があるのです。そうしなければ、クリスマスやお正月にデンドロビュームが店頭に並ぶことはないのです。

やはり止め葉の確認できる株


温室内では6月、7月には早咲き品種のなかにはすでに止め葉が確認できるような株もあるのです。

このように弊社から購入した最初の年には、温度管理の違いから、多少生育のリズムが狂うこともあると考えられますが、翌年からは通常の生育サイクルで育ってくれるでしょう。




May 30, 2011

オリエンタルマジック‘#293’

Den.Oriental Magic '#293'
(Den.Oriental Magic 'No.60'  x Den.Oriental Magic 'No.84') 

オリエンタルマジック‘#293’
Den.Oriental Magic '#293'


Den.Oriental Magic自体は(Den.Spring Sunset x Den.Yuubae)として1995年にRHSに登録されていますが、こちらの個体は初花から選抜したまったく別の個体同士を交配したものです。
交配名の後ろの番号から異なる個体であることがわかります。 'No.60'  x 'No.84'ということです。
当時オリエンタルマジックは100株ほど初花を選抜しています。
個体が違っても交配親が同じなら、いくら掛け合わせても同じ交配名なので、 
オリエンタルマジック x オリエンタルマジックはオリエンタルマジックなのです。
※ このような交配のことをシブリングと呼んでいます。


Den.Oriental Magic '#293'





研究温室で余剰が出たため今回限定で販売します。
現在市販されているいずれのオリエンタルマジックの個体とも異なりますので、コレクションの方には貴重な品種といえます。

Den.Oriental Magic '#293'






オリエンタルマジック‘#293’に興味をお持ちの方はこちらをご覧ください。

http://item.rakuten.co.jp/dendro/10000644/

May 29, 2011

ハニースマイル‘パピヨン’

Den.Honey Smile 'Papyon'
(Den.Okayama Gold  x Den.Golden Egg) 2009年RHS登録

ハニースマイル‘パピヨン’

Den.Honey Smile 'Papyon'


丸弁良型の純黄色系の最新品種。
リップ中心部はペタルの色合いに比べてやや濃い黄色である。厚弁で花保ちも良い。


Den.Honey Smile 'Papyon'



おもにバックバルブに着花するため鉢に仕立てるとこのような咲き方になりますが、芽吹きも良いため、毎年同様の開花が楽しめます。
Den.Honey Smile 'Papyon'

写真は開花したバックバルブを前にせり出して仕立ててあるだけで、上に見えているのは新バルブになります。



 
ハニースマイル‘パピヨン’ に興味をお持ちの方はこちらをご覧ください。

http://item.rakuten.co.jp/dendro/1552755/

May 28, 2011

ハワイから苗が到着

本日28日、ハワイ農場から来年の歳暮贈答用にに開花させる自家用の苗が到着。



今年はあいにくの梅雨ですが、例年気候のよいこの時期は苗の導入に最適なシーズンです。




ハワイ島ヒロ空港からホノルル経由で関空へ到着した苗は4日以上の長旅にもかかわらず、痛みもなくしっかりした様子。



この箱ひとつに700から800本ほど入っています。
茎葉もしっかりとして艶のある苗です。






この苗が来年の歳暮用鉢物として活躍してくれるのです。


ちなみに昨年の同時期に輸入した苗の様子はというと、
現在、このようにしっかりとした開花株に育っています。



6月中には6.5号サイズ以上の鉢に寄せ植えされて立派な鉢に仕立てられていきます。




このように育苗生産に特化したハワイ農場では、いつでも健全な苗の大量供給が可能となっています。

種苗の自家生産による「コストの節減」もーつの方法ではありますが、デンドロビュームの種苗の生産にかかる労働力の削減をすることで、この手間と時間を「新たな生産性のある、さらに言えば収益性の高いこと」に振り向けてみられては如何でしょうか。

デンドロビューム生産者の皆様には是非、山本デンドロビューム園タイ農場と併せてデンドロビュームの苗の供給基地として十二分に活用していただければと思います。




May 27, 2011

Den. Upin King 'Serenade'
ユーピンキング‘セレナーデ’

Den. Upin King 'Serenade'

(Den. Wave King x Den. Upin Red) 1995年RHS登録

ユーピンキング‘セレナーデ’


Den.Upin King 'Serenade'


たいへん豪華な印象の極大輪のデンドロビューム。
リップは丸く豊大で、中心に赤褐色の目入り、その側を黄色と白色が彩るたいへん美しい花。

節間が短く、太いバルブに密集して咲くため、大株に仕立てる見事です。

Den.Upin King 'Serenade'


 中苗サイズでも十分すぎる花つきで、とても育てやすいです。

Den.Upin King 'Serenade'




ギフト向け鉢物品種としても活躍しています。




Den.Upin King 'Serenade'



ユーピンキング‘セレナーデ’ に興味をお持ちの方はこちらをご覧ください。

http://item.rakuten.co.jp/dendro/518464/

May 26, 2011

梅雨期の管理

岡山(中国地方)は今日梅雨入りしました。
平年より12日早く、昨年比では、18日も早い梅雨入りだそうです。




デンドロビュームの梅雨時期の管理を投稿します。


梅雨の雨にあてると酸素を含んだ新鮮な水のおかげで、驚くほどの根が張り、立派な株に育ちます。しかしながら、あまり長雨が続き、葉や茎に病気の発生が心配されるときには、軒下などに非難させたほうが良いでしょう。





湿度が高い状態が続き、斑点病や軟腐病が心配されます。発病により、葉を落としてしまうとその後のバルブの生育に良くありませんのでくれぐれも注意をしましょう。





また、植え替え直後の株や、少し弱った株のような養生が必要な場合には長雨により、逆に根を痛める可能性もあります。
鉢が湿っているのにもかかわらず、バルブに皺が出て痩せてくるようなら、根痛みの恐れがあります。根の状態をみて必要なら植え替えをしてやります。

この時期、湿度が非常に高いので、鉢の中が乾きにくくなります。 梅雨が明けるまでは、これまでどおり、しっかり乾いてからの水やりで大丈夫です。


梅雨の晴れ間は大切にし、光線不足にならないよう育ててやりましょう。

May 25, 2011

植え込み材料にバークを使用する

「植え替えにバークを使っても大丈夫でしょうか?」
こんな質問のお電話を頂いたので、バークを使った植え替えについて投稿します。


まず結論から言うと問題なく使用できますし、ベラボン(ヤシガラ)にくらべても乾きも良いので、根腐れの心配がないため水やりでの失敗が少なくなるでしょう。胡蝶蘭やシンビジューム、カトレアの植え替えではバークの使用は一般的ですね。

すでに他のランにバークを使用して余っていたり、バークの使用に慣れているという場合には植え替えに使っても大丈夫です。
デンドロの場合は根が細いのでバークの使用サイズは小さめを使用します。


使用する鉢はベラボン(ヤシガラ)同様にプラスチック鉢、あるいは陶器の鉢になります。
周囲に流しこみ、少し固いくらいに植えないと鉢の中が締まらず、株が安定しません。
鉢の周囲にしっかりと隙間なく詰め込みます。
植え替え直後は水を控えますが、バークの場合は水苔植えやベラボン(ヤシガラ)植えに比べて、水はけが極端に良すぎるので、乾き過ぎへの注意が必要です。



乾き過ぎが心配な場合は、ベラボン(ヤシガラ)を混ぜ込んでみるのも良いでしょう。
バーク単独よりも、よく締まるので、しっかりと植えこみ出来ます。





この使い勝手の良さそうなバークですが、デンドロビュームの生産において、ベラボン(ヤシガラ)の使用が多いのには理由があります。

以下の写真は、数年前に試験的に行ったベラボン(ヤシガラ)とバーク(ニュージーランド産)をそれぞれ使用した植え替えの比較です。
生育期である5月上旬に7.5cmポットに植え替え後、3ヶ月たった8月後半に生育状態を確認したもの。
比較しやすいように先に透明ポットに植えたものを黒いビニールポットを被せて育てました。
黒のポットを抜いてみたところ。
どちらも、白い根が見えます。
新バルブが良く太ってきていますが、ベラボンで植えたほうがやや色も濃く茎も太くしっかりしている印象を受けます。

バークを使用


ベラボン(ヤシガラ)を使用



ビニールポットを抜いて比較してみます。
まずはバークで植えたものです。根腐れもなく、きれいな真っ白の根がまわっていますが、約3ヶ月栽培した割には根の量はやや物足りない印象です。


バークを使用

こちらはベラボン(ヤシガラ)を使用したもの。バークで植えたものに比べて根の量が圧倒的に多いのがわかります。

ベラボン(ヤシガラ)を使用




比較からはどちらもきれいな根が確認できるのですが、ベラボン(ヤシガラ)植えのほうが根の量が多く、また新バルブも太く、色も鮮やかで、しっかりしており、株元から孫芽とも言うべき、新しい芽の確認できる株もあります。

バークを使用すると思った以上に乾いてしまうため、 鉢と植え込み材料の隙間に水が残りにくく、肥え切れや水不足が生じるようです。ベラボン植えに比べて枝分かれした細い根が多いのも乾きやすいためではないでしょうか。

このように見てみると、バークはその水切れのよさから、鉢の中であっても着生ランの自然の状態に近づけてくれるような感じでしょうか。
秋から冬にかけて、水やりの失敗を繰り返すような方には比較的失敗の心配も無く安心して使えるように思えます。反対に夏の高温時には乾き過ぎないように注意が必要です。



植え込み材料に何を使うかは使い慣れた材料や、好みの問題もあります。しかしながら、ベラボンとバークの比較試験の結果からみるとデンドロビュームと相性が良く、生育が良いのはベラボン(ヤシガラ)のようです。ベラボン(ヤシガラ)をうまく使いこなせたほうが、デンドロビュームの生長に良い結果がみられそうです。







May 24, 2011

オリエンタルマジック‘神戸デライト’

Den.Oriental Magic 'Kobe Delight'
(Den.Spring Sunset x Den.Yuubae)  1995年RHS登録
 
オリエンタルマジック‘神戸デライト’

Den.Oriental Magic 'Kobe Delight'


オリエンタルマジックの交配の中でもたいへん珍しい色彩。花付きもよく、日増しに色彩が変化するのがとても楽しみなデンドロビュームです。



Den.Oriental Magic 'Kobe Delight'



Den.Oriental Magic 'Kobe Delight'


こちらは開花直後の様子。

Den.Oriental Magic 'Kobe Delight'


オリエンタルマジック‘神戸デライト’に興味をお持ちの方はこちらをご覧ください。

http://item.rakuten.co.jp/dendro/402323/

May 23, 2011

播種から8ヶ月後の様子

デンドロビュームの播種から約8ヶ月経ちました。


2ヶ月前の3月23日の投稿では播種から6ヶ月経ったフラスコの様子を紹介しました。

これがその時の画像です。
小さいながらも品種ごとに個性が出てきた様子をを紹介しました。




播種後約6ヶ月経過したフラスコ苗




そして現在、上の画像撮影時からさらに2ヶ月たった様子をご覧ください。
播種後からは約8ヶ月経過しています。





フラスコ内で大きく伸びた苗はたくさんの葉と根を展開し、ひしめき合っています。



十分に生育した幼苗は根も溢れ、フラスコ内だけでは窮屈になってきました。
フラスコの外、コミュニティポットへ植え出しが必要になってきました。






フラスコから取り出し、根に残った寒天培地を良く洗い、綺麗に取り除いてやります。






ここでは素焼き鉢を使用。プロミックスにバーミキュライトを配合したコンポストを使用します。



フラスコ内で高湿度に保たれていた苗は植え替え直後は環境の変化により、強光線やつよい風に当てるとすぐに痛んでしまいます。

これまでとまったく異なる環境へ慣らせるため、通常の育苗よりもさらに明るさを抑えた遮光ネット下での管理が必要です。
しばらくは灌水も慎重に、徐々に外の環境に慣らしてやります。



メリクロン苗と違い、品種によって大きさが不揃いのため、1つの鉢に植える本数は5から8本と異なりますが、同一交配の種からは大体140から150本程の苗を植えてやります。
フラスコ内の苗の本数はそれ以上ですから、ここでも苗の選抜が行われたことになります。


すべての交配が結実し、播種、そして発芽に至るわけではないのですが、昨年の交配実績から計算しておよそ4万本近くの実生苗がフラスコから出されることになります。



ここでコミュニティポットに植えられた苗も大きくなれば次には単独で、ビニールポットへ植え込みがなされますが、その時は再び、選抜されて良い苗だけが残されていきます。



播種から約8ヶ月でフラスコの外へ出た実生苗ですが、開花まではまだまだ長くかかります。
引き続きこの実生苗の生長を見ていきたいと思います。







May 22, 2011

オリエンタルマジック‘オリエンタルサンセット’

Den.Oriental Magic 'Oriental Sunset' BM/JOGA
(Den.Spring Sunset x Den.Yuubae)   1995年RHS登録

オリエンタルマジック‘オリエンタルサンセット’BM/JOGA

Den.Oriental Magic 'Oriental Sunset' BM/JOGA

聞きなれない名前のこの個体、1992年に入賞したまま増殖も販売もされず、研究温室で保存されていましたので、今回ご紹介いたします。

Den.Oriental MagicがRHSに登録されたのが1995年ですから、出品時は交配親(Den.Spring Sunset x Den.Yuubae)  と個体名の‘オリエンタルサンセット’だけでした。

交配番号と個体名のみがラベルに記載されたままの古い株が研究温室にずっと残っていたため、良く調べてみるとDen.Oriental Magicオリエンタルマジックの交配であることがわかったのです。

Den.Oriental Magic 'Oriental Sunset' BM/JOGA


Den.Oriental Magic 'Oriental Sunset' BM/JOGA

開花直後は桃色から赤に近い色彩ですが、次第に中心部分の黄色が強くなりオレンジに色づいてくるため色彩変化が堪能できます。

Den.Oriental Magic 'Oriental Sunset' BM/JOGA



現在、販売はしていませんが、興味のある方は問合せください。
info@dendrobium.net


May 21, 2011

インドヨウ

Den.Indyo
(Den.Felicity x Den.nobile)  1929年RHS登録(登録者 島津氏)
インドヨウ


Den.Indyo インドヨウ



とても古いデンドロビュームの交配種を紹介します。
1920年代、わが国でデンドロビュームの育種が本格的に始まったころの代表的な品種です。
登録者は島津氏。
白弁でリップに紫褐色の目が入る清楚な花。現在の大輪系優良品種の基礎となった非常に貴重な品種です。


Den.Indyo インドヨウ


このインドヨウについては次のようなエピソードがあります。

当時、外交官であった島津氏は手塩にかけた実生苗につぼみがつき、初開花を数日後に控えて、イギリスへ赴任のために日本を離れなければなりませんでした。
その胸中を察したご家族の提案で、この株を荷物とともに船に持ち込み、赴任の途につきました。
そして、船上で栽培管理を続けた甲斐あって、船がインド洋に差し掛かったときに美しい初花を咲かせることに成功したのでした。
この初花は大勢の乗客の賞賛の的となり、島津氏はたいへん感激し、この交配種にDen.Indoyo インドヨウと名づけて国際登録したのです。
この品種はその後,日本に持ち帰られ、多くの愛好家の目を楽しませたのです。


Den.Indyo インドヨウ



Den.Indyo インドヨウ




現在のデンドロビュームと比べれば、花型、草姿は古めかしいものではありますが、当時の趣味家を驚かせたこの花は素朴で清楚な印象。今でも十分楽しむことができます。