Jun 1, 2011

デンドロビュームの6月の管理

6月になりました。
梅雨の季節をむかえ、天候の優れない日も続きますが、デンドロビュームにとっては生育の最盛期に入ります。

全国的にも戸外での栽培が可能な気温になり、冬期に無加温で栽培をした株も、新芽や根に勢いが増し、気持ちよく伸び続けます。

デンドロビュームの6月の管理を簡単にまとめてみました。



置き場所について


デンドロビュームは、原産地では高い樹の上に着生しており、新鮮な空気と明るい光線を浴びる場所でのみ見ることが出来ます。

戸外へ出されたデンドロビュームは日当たりと風通しの良い場所を基準に、置き場所を選ぶと良いでしょう。
梅雨に入り雨の多い季節ですが、自然の雨に当てることで、新鮮な水と酸素を根に補給し、新芽や根が盛んに伸張します。
原産地のインド、ミャンマー、タイなどでも、乾季の間、乾燥に耐え、雨季であるモンスーンの季節に入ると同時に一斉に新芽が伸び、生育を始めるのです。

健全な生育のためには快適な環境を整えてやることが大切です。日当たりの悪いところ、風通しの悪い所、コンクリートの床の上のような照り返しの強い所などは避 け、雨の跳ね返りやナメクジなどの害虫の侵入を防ぐため、できれば地面より数10cm離れた棚の上で育てたいものです。

プランタースタンドや、園芸用のラックを利用して、地面から離れた風通しの良い場所を確保しましょう。
 

デンドロビュームの6月の置き場所



光線について



デンドロビュームは種類の多い洋ランの中でも特に日光を好む種族なので、風通しの良い場所に置いて、できるだけ直射光線下で栽培するようにします。
しかし、6月は梅雨の影響で、晴天が少なく、光線不足になりがちです。わずかな時間も大切に日光に当てるよう管理します。
梅雨の晴れ間にはなるべく光線に当ててやりたいですが、6月とはいえ季節は着実に夏へ近づいています。徐々に遮光のことも念頭においておく必要があります。





葉焼けや高温障害を起こすことが考えられますので、晴れ間の光線が強いと感じるようであれば、寒冷紗やすだれ等を利用して遮光をすると良いでしょう。遮光率は30%から40%程度のもので大丈夫です。加えて風通しがよい環境下で栽培できれば理想的です。

このような日当りが悪く、風通しの悪い栽培環境では良い生育は期待できません。

 



葉と葉が重なり合い、栽培条件は非常に悪い


右が風通し、日当たりも申し分ない環境で育った株。
左の株は密集状態で育った株。すでにバルブの生育に大きな違いが見られます。


バルブの太さに明らかな違いが見て取れる



バルブの太さだけでなく、密集状態の株は節間が間伸びしており花つきも貧弱なものになるでしょう。




水やりについて


新芽が盛んに生長する時期で、根も多く伸びてくるため、デンドロビュームは5月に比べてもさらに多量の水を要求するようになります。特に戸外の通風の良い場所で管理されている株は乾燥もはやく、水やりの回数も増えてきます。

しかし、水やりのタイミングにも注意が必要です。
梅雨の雨のように新鮮な酸素を含んだ水が何時間も鉢の中を通り抜けるような水やりであれば、根腐れの心配はありませんが、鉢の中が乾かないうちに次を与えてしまうような中途半端な水やりは鉢の中に古い水を停滞させ、根ぐされの原因になります。

写真は既に根の細胞が死んでしまったもの。ヤシガラに停滞した水はかび臭く、ひと目で状態が良くないことがわかります。




特に雨の日が続くと陶器鉢やプラスチックの大きな鉢は乾きが悪くなることもあります。鉢の中がよく乾いてから次の水やりを行ないます。

乾き具合がわかりにくい場合は、鉢を実際に持ってみて、または一度鉢から抜いてみて、湿り具合を実際に確認すると安心です。乾いたと思っても、実際には湿っている場合が多いと思います。
水をたっぷり含んだ根と乾いてきた根の違いを見てみましょう。


根が乾いてくると表面が白くなってきます


梅雨の長期の降雨には注意
梅雨の雨にあてると酸素を含んだ新鮮な水のおかげで、驚くほどの根が張り、立派な株に育ちます。しかしながら、1週間以上、長期に渡って雨が降り続き、葉や茎に病気の発生が心配されるときには、軒下などに非難させたほうが良いでしょう。植え替え直後の株には特に注意を払います。



酸素を含んだ新鮮な水は発根を促します




肥料について


すでに油粕などの固形肥料を施している場合には、あらためて施肥の必要はありませんが、
施肥から1ヶ月以上経過し、効き目が薄れているような場合には、少量の油粕であれば施肥しても差し支えありません。固形肥料の使用は6月までを目安とします。
すでに十分、肥料の効果が見られる場合や、やりすぎが懸念されるような場合には、水溶性の液体肥料(洋らん専用液肥、ハイポネックス)のみに切り替えると肥培管理が楽になります。

肥料の効果で葉の艶もよく、生長が感じられるため、つい欲を出してさらにたくさんの肥料をやりがちになります。しかし、これは施肥過多によって根に障害が出て株を衰弱させたり、窒素過多で高芽をだす原因になります。
デンドロビュームは肥料のほとんど必要のない洋ランです。特に初めての栽培の場合は適量を身につけるためにも標準以上の量や回数濃度を与えないように注意します。


病害虫について


長雨により低温多湿が続けば黒斑病などの斑点病が多発することがあります。早期発見、早期予防が肝心です。ダイセン水和剤やトップジンM水和剤の散布が有効です。
また、湿度が高くむれやすい状態が続くと展開中の柔らかい新芽の根もとが腐る軟腐病や展開中の葉に疫病が発生します。ヒトマイシンなどの散布で予防しますが、通気や日当たりを良くし、環境を改善することで発生を抑えるようにします。



柔らかい葉に病斑がでやすい


ナメクジが多く発生する時期です。せっかくの新芽や新しい根を食べられてしまっては、その後の生育に影響もでます。置き場所に工夫することだけでなく、湿気が多く、発生が想定される環境で栽培されている場合にはナメクジ駆除剤の使用も有効です。


柔らかい部位を好んで食害します




 植え替え


植え替えの適期であり、この時期に植え替え作業を行なうと植え痛みも少なく、根もスムーズに活着し、生長を止めてしまうこともありません。極端に大きな鉢は使用せず、一回りだけ大きめの鉢を使用しておこないます。

植え替えは4月から6月くらいまでが最適です。