デンドロビュームの基礎知識


デンドロビュームとは 
デンドロビュームは胡蝶蘭(コチョウラン)、シンビジューム、カトレアと並んで最もポピュラーなラン科の植物で、学名はDendrobium、その読みがデンドロビュームまたはデンドロビウムと呼ばれています。

デ ンドロビュームの語源は1799年にスウェーデンの植物分類学者Swartz氏がギリシャ語のDendron( = tree 樹木 )とbios( =life 生命、生活 )の言葉から、「樹上で生活する」と言う意味でDendrobiumと命名しました。デンドロビュームはその名の通り、樹上で生育する着生ランです。

デンドロビューム属の原種の数は、1600種以上とされ、現在でも新種が発見されるなどその種類の豊富さはラン科の中でも非常に巨大な属のひとつといえます。
その分布は広く、熱帯アジアを中心に北は日本から南はニューギニア、オーストラリアにまで及びます。


その形態は多種多様で、小さいものは3cmくらい、大きい種類では2mに達するものもあります。
性質も高温性から中温性、低温性とさまざまです。
日本にもセッコク(Den.moniliforme)、キバナセッコク(Den.tosaense)と呼ばれる原種が自生しています。

デンドロビュームは分布域が広く、形態変化が多様で種類も多いことから4亜属と41節に分けられますが、こちらはかなり専門的でその線引きも複雑で非常に難しいとされています。
※山本デンドロビューム園は原種の分類については専門ではありませんので ここでは省略させていただきます。

ここでは一般的に広く栽培されており、普段、皆様が目にする機会の多い園芸品種について、大きく4つの系統に大別して簡単に説明してみます。



ノビル系
タイ、ミャンマー、インド、ラオス、中国の雲南地方を中心に分布しておりデンドロビュームの中で最も種類が多く普及しているタイプです。
代表的な品種は原種Den.nobileで、この系統の品種改良にはその他10数種の原種が関わっており、ノビル系デンドロビュームの基礎となっています。
ノビル系デンドロビュームの最初の交配で生まれたのが Den.Ainsworthii です。これはイギリス人のAinsworth氏がDen.nobileとDen.aureumを交配して作出したもので、1874年にRHSに登録されています。
日本のセッコク(石斛)もこの系統に分類され、江戸時代には既に長生蘭の名前で園芸品種として栽培され、親しまれています。
その後、ノビル系デンドロビュームは数多くの交配種が作出され、園芸品種として広く栽培され,愛好家も非常にたくさんいらっしゃいます。
年末の歳暮時期から春先まで店頭に並ぶのもこのノビル系デンドロビュームが中心です。
山本デンドロビューム園が栽培しているのも、 ノビル系デンドロビュームです。



ファレノプシス系(デンファレ系)
正式にはデンドロビューム・ファレノプシス系と言い、日本では一般にデンファレと呼ばれ親しまれています。
この系統は原種Den.phalaenopsis の名前に由来します。オーストラリア北部、ニューギニアなどの高温多湿地帯に自生しており、着花状態や花型がファレノプシスに似ていることからこの名前がついています。
1880年にBroomfield氏によって発見され、R.D.Fizgerald氏によって紹介されました。
最初の交配は1932年にハワイのJanGoo氏がDen.phalaenopsisとDen.undulatumを交配し、Den.Paulieと名づけて発表しています。
初期はハワイにおいて交配育種が始まりましたが、近年はタイ、シンガポール、マレーシアでの生産が盛んです。春から夏にかけて店頭で多く見られるので夏の洋ランの印象があります。



フォーモサム系
原種のDen.formosumに由来し、このDen.formosumをもとに改良された品種群をフォーモサム系と呼びます。タイ、インド、ミャンマーの高冷地から平地の高湿地帯にまたがり、岩などに着生するとされています。
1832年にWilliam Roxburgh氏が発見し、1937年にはGibson氏によってヨーロッパに紹介されました。
最初の交配は日本の高木作一氏によりDen.formosumとDen.infundibulumが交配され、その交配種はDen.Formidibleと名付けられ、1967年にRHSに登録されました。
一番多く流通している交配種にフォーミディブルという交配種があるため、フォーミディブル系と呼ばれることもあります。日本では春先からお中元の頃まで見かけることができます。



キンギアナム系
原種のDen.kingianumに由来します。原産地はオーストラリアで標高600から1200メートルの日当たりの良い場所の岩場に着生する低温に強い種類です。

1939年Phillip Parker King氏によって発見されDen.kingianumと命名されました。
最初の交配はDen.falcorostrumとDen.kingianumを交配して作出したDen.Bardo Roseでした。
日本にも古くから導入されこの系統の中のDen.speciosumは特に耐寒性が強く、「大名石斛(ダイミョウセッコク)」の名で親しまれていました。
Den.speciosumとDen.kingianumを交配した、Den.Specio Kingianum(スペシオキンギアナム)が作出され観賞価値が一段と高まりました。




デンドロビュームがヒマラヤの産地で発見されたのは1800年代半ばのことです。その清楚な美しさはヨーロッパ人の心をとらえ、いわゆるプラントハンターによって数多くの原種が発見されました。そして愛好家らによって育種改良がなされました。
それから150年以上たった現在ではデンドロビュームはラン科の植物の中で最も親しまれるグループの一つとなったのです。