2010/10/03

寒さに当てる?室内に取り込む?

前回の投稿記事で10月のデンドロビュームの管理について書きました。

ここでは秋の生育の最終段階に一番重要なバルブ(茎)の状態について、充分に成熟しているかどうかの判断や室内に取り込むタイミングについて詳しく説明します。


デンドロビュームは夜間の最低気温が14度以下の低温に延べ日数で20から25回くらい当てることで花芽分化を起こし、花が咲く準備が出来ます。
一般的には10月から11月にかけて戸外で管理して室内に取り込むことで 、花芽分化に必要な低温に当てることが出来ます。
関東方面では11月の中旬までには充分な回数が当たるようです。

ところがこれはデンドロビュームのバルブが充分に成熟していることが前提のはなしです。
 
もしも、14度以下が続くような時期になった時にバルブが充分に成熟していない場合、そのまま寒さに当たってもその部分には花芽分化が起こらないため、花芽が付かず不揃いな花付きになります。
お手持ちのデンドロビュームを一律に戸外に出しっぱなしにするのではなく、夜間の最低気温が15度前後になる頃に、充分に成熟した株と、成熟の遅れた株を分けてやり、成熟の遅れた株は室内に取り込むなど株の状態で判断する必要があります。


デンドロビュームの花付きが良くない原因の多くは、低温の回数が足りないのではなく、低温に当てる前のバルブの成熟不足にあるのです。



では、どのように判断すればよいかスイートピンキー‘モモコ’を見本にバルブ(茎)の状態を見てみます。
茎の色、先端部の状態を比べてみてください。


完熟状態の株
はちきれんばかりに丸々太ったバルブです。
しっかりと太陽光線に当たり飴色に近い状態です。いつ寒さに当てても構わないほど成熟した良い株です。
バルブの先端を指で摘むと硬くしっかりと成熟していることがわかります。

指で摘むとバルブの上部まで硬く成熟しています。


バルブを包む葉がはちきれそうな程成熟しています





ほぼ充実し、まもなく完熟状態の株
先端部は丸く太っています。バルブの色はまだ緑ですが濃すぎることもなく、これからしっかりと太陽光線に当ててやれば色も褪せてきて完熟状態になります。
指で摘めばバルブは先端部までほぼ硬くなっているのがわかります。
このまま戸外で管理していても大丈夫です。秋の低温に当てることが出来るでしょう。


バルブに張りが出て飴色に色褪せれば完璧です


色はまだ緑であるがほぼ完熟に近い





もう少しで完熟しそうな株
バルブの完成まであと一息です。バルブ先端部分がその下のバルブの色よりやや緑が濃いのがわかります。
先端部は指で摘むと少し柔らかい感じがします。
外の最低気温がまだ17度前後であればこのまま戸外で管理を続けても大丈夫です。これから太陽光線にしっかりと当ててやり、なんとか外で寒さに当てることが出来そうです。

もしも外の最低気温15度前後に下がっているようであれば、夜の間だけでも室内に取り込むなどして生育を早めたほうが良いでしょう。
デンドロビュームの生長は昼と夜の積算温度に影響されますので、夜の温度が2~3度違うだけでもこの最後の成熟期間で生育に差が出ます。







まだまだ未熟な状態
完熟と言うには程遠い状態です。早急に室内に取り込む必要があります。
秋に戸外で寒さに当てることは考えず、すぐに室内の明るい場所で管理します。
冬に室内の寒さでも充分に低温処理できますので、あわてる必要はありません。
バルブをしっかりと成熟させることを最優先で考えます。


先端部は柔らかく、とても花が咲く状態ではありません。


まだまだ未熟で細すぎます



やっと止め葉らしきものが見えてきた状態



ここまで写真を使ってバルブの状態の違いを見ていただきましたが、このバルブの成熟末期に戸外での管理を続けるか、室内に取り込むかの判断で来春の花付きを大きく左右します。
判断に迷う場合は早めに室内に取り込んだ方が無難です。

室内の明るい場所で確実にバルブを完熟させてやれば、その後は冬になってから室内の夜の低温で必要な寒さに当てることは可能です。成熟が遅れて1月、2月に低温に当てても構わないのです。

何がなんでも必ず秋に戸外で寒さに当てることが正しい管理ではありません。
むしろ、 バルブの見極めが難しい初心者の方は秋には早めに室内に取り込んでバルブを完成させて、冬に室内で低温に当てるような簡単な管理で栽培に望まれたほうが失敗もなく確実に花を咲かせることが出来ます。



今まで、花付きが不揃いだったり、全く付かない、夏にぼけて咲く等、花付きが悪くて困っている方は今年の秋はいつもより早めに室内に取り込んでみてはいかがですか?