Jul 6, 2012

デンドロビュームの株分け


「株分け」に関して説明が欲しいと以前から問い合わせをいただいておりましたので、説明します。
ここで知っておいていただきたいことは、技術的なことよりも、根を切り分けたり、茎にはさみを入れることで、「株分け」の結果、病気の侵入やウイルス病への感染、根を傷つけ生育を鈍らせるなどの影響があることです。
「株分け」は、株が増えて嬉しく思えますが、どうしても必要な時以外はなるべく避けたいものです。

プロの作業現場でも頻繁に行われるものではありません。


ではどのような状態の鉢に対して、株分けが必要なのでしょうか?

  • 植え込み材料が古くなり、鉢の中の状態が良くない。
  • 株が古くなりすぎて、明らかに作落ちしている状態。
  • 鉢が大きすぎてこれ以上の植え替えが困難。
年々、株に元気が無くなっている場合
ここでは5年以上同じ鉢で育てたものを用意しました。
何年も古い株を育てていくと、根が溢れ、新しい根は鉢に収まらず、次第に作落ちしてきます。

新しい根が鉢に入っていかない場合


こうなると、株分けをして新たに植えなおしてやるほうが良いでしょう。
それでは鉢を抜いてみます。


表面はは植えこみ材料が見えないくらいの根張りです。
しかし、これらすべてが生きた根が張っているわけではありません。
年月が経ち既に役目を終えた古い根も絡まったままの状態です。




ギフトでいただくことが多い寄せ植え鉢などは、予め複数の株が寄植えされて栽培、出荷されることが多く、根がびっしりと絡み合っていることが殆どです。
植え込み材料が見えないほどの根が回っている場合は、切り分けるためにハサミを使用します。






ハサミやカッターナイフなど、根やバルブに直接触れる部分には第三リン酸ソーダで消毒したものを使います。作業途中でも何度か器具を消毒する事をオススメ致しします。念には念をですね。

雑に見えますが、実は一番気を使う作業です。
どこにハサミを入れるか予め見当をつけておきます。
新芽、新バルブ、それ以前の古いバルブを含めて3本以上はバルブを残して切り分けます。
それより古いバルブは新芽が出る可能性が低く、そこから伸びた根は殆どが枯死しているため、残しません。
特に新芽を折らないよう、注意が必要です。



何年も作りこむと、植え込み材料は一体どこへ?と思うほどほぐしても、ヤシガラはほとんど出て来ません。
根だけが絡まった状態になっています。
大まかに切り分けた後は、その中から、古くなった根を底の方からほぐすように取り除きます。

古い根を取り残してしまうと植え替え後、新しい鉢の中で腐敗する原因になります。




丁寧にほぐし、古いバルブと根の位置関係が分かれば作業ははかどります。
そしてさらに細かく切り分けます。




随分すっきりと整理できました。
左が新バルブでそれ以前の古いバックバルブを2本残しています。
左のバルブから伸びる白い根が新しく、健全であることが分かります。

新バルブ、バックバルブが2本付き


伸びたばかりの新芽と新バルブ、さらに古いバックバルブ2本を残しました。切り分ける時に、この新芽を折ってしまわないよう、注意が必要です。

新芽、新バルブ、バックバルブ2本付き




さて、こうして切り分け、整理した株は随分すっきり、小さくなりました。





後は、適切なサイズの鉢に植えてやるだけです。
大事なことは株の大きさに惑わされずに、根の少なくなってしまった株に対しては必ず小さな鉢を使用することです。

背丈があるからといって、草丈にあった鉢でバランスを揃えようとせず、根が少ない場合には小さな鉢を使用することが重要です。
多少の根の量の差は鉢サイズではなく、 鉢底に入れる発泡スチロールや軽石の量を調整してやると良いでしょう。根の少ない株には発泡スチーロールをやや多めに入れて水はけを良くすれば、根腐れを軽減することが出来ます。

根の少ない株には発泡スチーロールをやや多めに入れると良い


作業前に以下のページで植え替えの基本を確認しておきましょう。
デンドロビュームの植え替え

デンドロビュームの植え替え(準備すること)