2011/05/01

デンドロビュームの5月の管理


新緑の心地よい季節となり、デンドロビュームにとって原産地の気候に似た快適な季節になります。
いよいよ生育も本格的になり、新芽も盛んに伸び始めます。
冬期に高温で管理した株は既に20センチ以上の新芽を伸ばし、10日に1枚程度の葉を展開させ、ぐんぐん伸びていきます。無加温で越冬させた株も生育を活発にします。


デンドロビュームの5月の管理を簡単にまとめてみました。



置き場所に付いて


デンドロビュームは、原産地では高い樹の上に着生しており、新鮮な空気と明るい光線を浴びる場所でのみ見ることが出来ます。


自生するデンドロビューム
自生するデンドロビューム


したがって、温度さえ十分に確保出来れば、直射日光の当たる戸外で、自然の風雨に当てながら栽培するのが理想的です。
夜間の最低気温が14度から15度以上になる頃を見計らって戸外へ出すようにします。
戸外と言っても、地面に直接置くと雨の跳ね返りや害虫の侵入が心配です。
プランタースタンドや、園芸用のラックの上など地面から離れた風通しの良い場所を確保します。
マンションなどのベランダに置く場合も、コンクリートの床に直接置くと、太陽光線の反射熱で高温になり株を痛める場合もありますので注意します。



温室も日中は常に開放して戸外と変わらない環境です


住まいの関係で外に置くことができない場合は、引き続き窓辺の明るい場所での管理になりますが、昼間の高温に注意して、常に風が通る様に気を配ります。これからの季節は密閉した窓辺は非常に高温になります。ちょっとした油断で高温障害で株をダメにしてしまう恐れがあります。



光線について



デンドロビュームは種類の多い洋ランの中でも特に日光を好む種族なので、風通しの良い場所に置いて、できるだけ直射光線下で栽培するようにします。
これまで、室内の暗い場所で管理していた場合には、いきなり直射光線に当てると葉焼けを起こしますので、徐々に明るい場所へ慣らしてやります。




置き場所に余裕があれば、鉢の間隔も広く開け、株元まで光線が当たるように管理すると茎の下部まで十分に太り、強健で病気にかかりにくい丈夫な株に育ちます。



株元に光線が当たらないと貧弱な株になります


新芽が伸び始める早い時期から光線にしっかりと当てることで、株元からよく太ったバルブに仕立てることが出来ます。



株全体に光線が当たる好環境が望ましい



ただし、無風状態での、高温、強光線には十分注意します。

置き場所の条件が悪く、風通しの悪い場所で栽培しなければならない場合には、直射光線下では葉焼けを起こす恐れがありますので、30パーセント程度の遮光が必要です。遮光ネット、寒冷紗などがホームセンター、園芸店などで入手可能ですので、探してみると良いでしょう。


光沢のある健康な葉は病気になりにくい




水やりについて


新芽が盛んに生長し、また風通しの良い場所へ置くことで、4月に比べてもさらに多量の水を要求するようになります。特に戸外の通風の良い場所で管理されている株は乾燥も速く、水やりの回数も増えてきます。

この時期の水やりで注意すべき点は鉢底から抜けるまでしっかりやることと、それが良く乾いてから次の水やりを行うことです。そうすることで水を求めて新しい根がどんどん伸びていきます。

湿っている鉢に毎日のようにやり続けると鉢の中に古い水分が停滞するようになります。そこに鉢の中の肥料分が蓄積され、塩類濃度が高まると根の伸張が阻害されます。ひどい場合には根腐れを起こし株を痛める結果になります。


健全な根は水やり後、2~3日ほどで乾いてきれいな白い根に戻ります。



デンドロビュームの健康な根
健全な根は白く綺麗



鉢の中が常に湿った状態は着生ランであるデンドロビュームの性質からも良い条件ではありません。
いつまで経っても茶色く湿ったままの根は、根傷み、根腐れの恐れがあります。



デンドロビュームの傷んだ根
傷んだ根は常に湿ったまま

 



しっかりやって、よく乾かし、またしっかり水やりをすることで、根の伸張を促し、それが株の出来につながります。いくらバルブが大きく育っても根が少なく、痛んでいる場合には良い花は咲きません。


新しい根が枝分かれして伸びていきます



根張りが花付きに大きな影響を与えるのです。 良い花を咲かせようと思えばいかに良い根を張らせるかに尽きるのです。
「デンドロビュームは根が命」です。

この時期、ついつい大きく伸びるバルブにのみ意識を集中しがちですが、鉢の中にも気配りをして、秋までに鉢の中が真っ白になるほどの根を張らせることを目標にしましょう。




肥料について


夜間の最低温度が12から13度くらいになってから施肥が可能です。
液肥(洋らん専用液肥、ハイポネックス)を所定の濃度、倍率で月に2から3回程度、水やりの代わりに施肥します。
よく根が張った株には発酵済みの油粕も有効です。水やりの度に溶け出して効果を発揮します。

デンドロビュームの肥料(油かす)

http://yamamotodendrobiums.blogspot.jp/2011/05/blog-post_17.html


ここで、注意したいのが肥料のやりすぎです。新芽が生長しているので肥料が多く必要のようですが、デンドロビュームは他の植物に比べ、驚くほど少ない肥料でよく、ここで示した以外の肥料や余分な量を施すことは根痛みの原因となります。
肥料が少なくて失敗することはありませんが、施肥過多によって根に障害が出て株を衰弱させることがあります。
特に初めての栽培の場合は適量を身につけるためにも標準以上の量や回数濃度を与えないように注意します。


デンドロビュームは肥料のみで大きくするのではなく、温度、水、光線、肥料がバランスのよい状態のとき驚くほどの生育を見せくれるのです。


下の写真は温室栽培で1月の新芽のスタート直後に油粕を施肥した株(右側のトレー)と 水のみを与えた株(左のトレー)の比較です。
デンドロビュームはバックバルブに養分を蓄えていますので、新芽が伸びないことはありませんが、適期に適切な肥料を施すことで明らかな生育の差が見られます。



施肥のタイミングが重要です


病害虫について


気温が上がり、水やりが増えてくる頃から、病害虫の心配が増えてきます。
斑点病のや軟腐病の発生が徐々に増えてきますがまだ、それ程心配する必要はありません。
日当たりよく、風通しを良くすることで、大半は防ぐことが出来ますので普段から栽培環境を整えることに気を配ります。

戸外での管理に移行して水やりが増えてくるとナメクジの被害が多く見られるようになります。
地面から遠ざけたり、あらかじめナメクジ忌避剤を撒いておくのも良いでしょう。




植え替え


夜の気温が13度から14度くらいになったら、植え替え作業をしても大丈夫です。花の咲き終わった株で根が鉢の外にたくさん溢れていたり、新芽の出ている側に根の伸びてゆく余裕がなくなった場合は、植替えをしてやります。
植替え、鉢増しは毎年行う必要はありません。
鉢に余裕がある場合はもう一年同じ鉢で作ります。2~3年に1度を目安にします。

植え替えは4月から6月くらいまでが最適です。