2011/04/12

デンドロビュームの植え替え(準備すること)

デンドロビュームは着生ランであり、鉢に植わっていること自体が本来の姿ではありません。
デンドロビュームの性質を考えた場合、なるべく小さな鉢で育てたほうが失敗が少なく、管理も容易になります。
しかし、花の咲き終わった大株や根が溢れ、鉢の中に根の張る余裕のない株にはやはり植え替え、鉢増しが必要になってきます。
春になり、夜の最低気温が12度から13度くらいになったら、植え替え作業をしてやります。

※秋から冬にかけては休眠期であり、植え替えをしても根が動かず、根傷み、根腐れの原因になりますので行いません。

ここでは植え替え方法の説明の前に植替え適期の判断、植え込み材料と鉢選び、用意したい道具の説明をします。



植え替えをすべき株

デンドロビュームの植え替えは、花の咲き終わった株で根が鉢の外にたくさん溢れていたり、新芽の出ている側に根の伸びてゆく余裕がなくなった場合に植え替えをしてやります。


2.5号ビニールポット植え



4.5号陶器鉢植え




地上部の茎が良く太り、さらに勢い良く溢れた根は健全な生育をしたデンドロビュームである証拠です。
このように、きれいな白い根がびっしりと張っており、いつ植え替えをしても良い状態です。

何で植えてあるかわからないほどの根の量


根痛み一つなくきれいな根





毎年植え替えが必要なのでしょうか?

植替え、鉢増しは毎年行う必要はなく、鉢に余裕がある場合はもう一年同じ鉢で作ります。

鉢の表面から根が目立たない、新芽の根が伸張する余裕が十分にあると判断できる場合には植え替えは必要ありません。



ビニール ポットから1本、新しい根が出ていますが、果たしてどの程度の根張りでしょうか。
鉢の中の状態は外見からは判断が難しいため、思い切って鉢を抜いてみるのが確実です。

この株はもう一年このビニール ポットのままでも良いでしょう。

鉢の中は十分余裕があります




下の写真の陶器鉢の表面には根がまわっているのが見られます。
少し鉢から外へ伸びているような根も見られますが、表面からはなかなか判断がしにくい場合も多く、意外に根の量は少なく、慌てて植え替えをするほどではないことが多いのです。

多少根が張っている様に見えますが

上の陶器鉢を抜いたところです。鉢の中は植え込み材料がむき出しで、まだ根を張る余裕が十分にあります。

鉢の中はそれ程でもありません





健全な生育のもとであれば、植え替えはひと回り大きめの鉢を使用して、2~3年に1度を目安にします。
 





株分けをすべきかどうか?

「株分け」は、株が増えて嬉しく思えますが、根を切り分けたり、茎にはさみを入れることでの病気の侵入やウイルス病への感染、根を傷つけ生育を鈍らせるなどの影響があることも理解しておきます。
どうしても必要な時以外はなるべく避けたいものです。
以下のような症状が見られる場合は株分けをします。
  • 植え込み材料が古くなり、鉢の中の状態が良くない。
  • 株が古くなりすぎて、明らかに作落ちしている状態。
  • 鉢が大きすぎてこれ以上の植え替えが困難。

年々、株に元気が無くなっている場合

新しい根が鉢に入っていかない様子



高芽が出やすくなってきた場合は根が傷んでいる可能性もあります。鉢の中の状態が良くない場合が多いのです。


根傷みは高芽の原因のひとつです





植え込み材料と鉢選び

植替え時に使用する植え込み材料は、ヤシガラ、水苔のどちらでも構いませんが、それぞれに適した鉢があります。

ヤシガラで植える場合は陶器鉢かプラ鉢を使用します。
通気性の良い、乾きやすいヤシガラを使うときは鉢の方を乾きにくい素材の陶器鉢かプラ鉢にしてやると良いでしょう。

ヤシガラには陶器鉢またはプラ鉢



水苔で植える場合は相性の良い素焼き鉢を使用してください。
保水力のある水苔には通気性の良い素焼き鉢が最適なのです。

水苔には素焼き鉢




 
デンドロビュームの植え替えに適切な鉢サイズはひと回りだけ大きな鉢です。
極端に大きな鉢に植えると大抵の場合、鉢の中が乾きにくくなり、根傷みを起こします。





植え替えの際は、ポットまたは鉢を抜き、根をほぐさないで周りに水苔を巻く、あるいは隙間にヤシガラを詰め込むだけで良いです。
黒く腐った根や植え込み材料が痛んでいれば取り除いてやりますが、健全な根を無理にほぐしたり、触ることはその後の生育によくありません。
ただし、水苔は劣化しやすいので古いものはなるべく取り除いたほうが無難です。その際はからんだ根を無理に剥がしたりして痛めないよう、優しく取り除くこと。



用意したい道具

植え替え作業にかかわらず、栽培において専用の園芸道具や、高価な器具は必要ないと思います。100円ショップなどで手に入るもので構いません。使いやすいものをお好みでご利用ください。
ここで紹介するのは植え替え作業によって病気やウイルス病に感染しないために必要な最低限の準備です。


新聞紙または植え替え専用の容器
植え替え時には植物を直接地面に置いたり、複数の植物の根が間接的に触れる状況を作らないようにします。
古い植え込み材料が他の鉢に混ざらないよう、新聞紙を広げて作業し、毎回交換する。
何枚か重ねて敷いておけば、作業の都度、上から順に新聞紙を取っていくことで、常にきれいな新聞紙の上で植え替え作業ができます。 作業が済めば、丸めて処分できるのもいいところです。


新聞紙だけでも十分です


可能であれば小さなたらいやトロ船、プラ船を植え替え専用に用意して、そのなかで作業します。
やはり新聞紙をあらかじめ敷いておけば、作業ごとに新しいものに取り替えることができます。
容器は時々、第三リン酸ソーダでの消毒を行います。

トロ船は安定感があり一つあると大変便利




園芸用ハサミまたはカッターナイフ
古い茎や、腐った根を処理するために使用します。




デンドロビュームの茎は硬いので、専用のハサミが良いでしょう。カッターナイフは刃を交換できる物で太い茎を切るときは切り口の断面がきれいなカッターナイフを使います。切り口がきれいな方が表面が早く乾いて、病気が侵入するのを防ぎます。
ウイルス病の感染予防のために、やはり複数の株への使い回しはしないよう注意します。
時折、第三リン酸ソーダで消毒します。


第三リン酸ソーダ

すでに何度も出ていますが器具、容器の消毒に、ウイルス病の感染予防のために第三リン酸ソーダ(第三リン酸ナトリウム)を用意します。
 5から10%液にして使用します。
大量に使用する場合は粉末を溶いて使用

溶けにくいためお湯で溶きます


第三リン酸ソーダは農協や一部園芸店では入手できますが、一般のホームセンターではなかなか販売していません。 
一般向けには使いやすいよう、あらかじめ5%液にしてあるビストロン5が便利です。
少量の使用にはこちらがお手軽でおすすめです。ビストロンはこちらを参考に


 
スプレー容器は広範囲の消毒に便利です

植え替えに使用した器具や容器などの面積の広いものを消毒する場合は、第三リン酸ソーダをスプレー容器に移し変えて塗布すると 使用量も少なくて済みます。

はさみやカッターナイフの消毒にはライターの炎で刃先を熱するのも良いですが、
ウイルス病を予防する上では第三リン酸ソーダ(第三リン酸ナトリウム)またはビストロンが確実で使いやすいでしょう。数分でウイルスが不活性化され、器具からのウイルス感染を防ぐ事ができます。

広口のボトルに移して使用すると便利

広口ボトルにビストロンをいれて刃先が薬液に浸るようにして使用するとよいでしょう。
十分に浸漬した後、きれいな流水で洗います。
はさみやカッターナイフを複数用意して交互に消毒すると便利です。


刃先がしっかりと薬液に浸かっていること






作業環境を清潔に保つこと

道具ではないのですが、習慣づけたい作業時の心得です。
作業に入る際は石鹸でしっかりと手指を洗うことはもちろんですが、作業途中も目安を決めて器具の消毒や手洗いをしっかりと行ないます。
ウイルス病を蔓延させて、大事な株をだめにして泣く泣く処分することを考えれば、面倒なことはありません。

ウイルスの感染経路は主に樹液感染であり、刃物の使用や容器の使い回し、人間の手、害虫などにより感染します。
常に栽培環境を清潔に保つことでウイルス病だけでなくその他の病気の予防に有効です。



準備ができたら植え替えてみましょう                         

使用する植え込み材料に合わせて以下のリンクから植え替え方を参照してください。


水苔で植える場合  


ヤシガラで植える場合


バークで植える場合