膨らんだ(成熟した)子房の中から種を取り出し、寒天培地に播きます。
鞘が弾けて種が飛び出すよりも前に播種します。
寒天培地に播かれたデンドロビュームの種 |
非常に小さな種は、まるできな粉の様な粒です。フラスコに播かれた種は見た目には少ないように見えますが、一つのフラスコに数百、数千粒はあるのではないでしょうか。
無数の小さな種の塊です |
これが一つの鞘から取れるすべての種ではありません。
1つの交配からの種をすべて播けばフラスコの数は10でも20でも足りないでしょう。
交配するデンドロビュームそのものが少なかった50年前、山本二郎がデンドロビュームの育種に着手した頃であればそのくらいは作ったでしょう。
当時は増殖手段として唯一の無菌培養の方法であり、また育種のために様々な交配をしようにも品種のバラエティそのものが非常に少ない時代で、優良交配の種を可能な限り播種をしたようです。
年間に生産可能な数やフラスコを管理する場所には限りがありますから、品種の数が増えてくれば、交配の組み合わせも多岐にわたり、ひとつの交配の組み合わせからの増殖は必然的に制限されてきます。
加えて、現在では、長年培われ蓄積されてきた育種開発技術を駆使し、遺伝的な根拠に基づいた育種を行っているためそれほどの数を必要としなくなったこともあげられます。
それでも年間約150~200組の交配を行い、1万株以上の実生初花を咲かせるわけですから、その育種には莫大なコストがかかります。しかも選抜して残すのはわずか数十株。
さらに商品として選抜されるのはその中のほんの数株に過ぎません。
こうした育種に対する厳しい基準での取り組みを50年以上も続けてきたからこそ、山本デンドロビューム園のデンドロビュームが現在でも世界最高品質を保ち続けることができるのです。
播種されたフラスコが無数に並ぶ |
さて、この播種されたデンドロビュームの種が発芽するには2~3週間、早いものは1週間くらいで発芽するものもあるようです。
子房の成熟の度合いも発芽の期間に影響します。
花が見られるのは早くて4年後の2014年です。ただし本来の株立ち、花付きなど品種の特性を判断するには翌年2015年の開花でなければ難しいでしょう。
育種とは本当に根気の要る仕事なのです。