2011/07/11

夏に咲く花

デンドロビュームに今の時期に花芽がついていますが大丈夫ですかという同じような内容の問い合わせを7月に入ってから数件いただきました。

中でも多いのは、弊社からこの春頃購入した苗に今の時期に花芽がついたというものです。
今日はなぜ夏にデンドロビュームの花芽がつくかについて考えてみます。


早速、弊社温室で同様の株を探してみました。



こちらの黄色品種は遅咲きですが新バルブに咲くタイプ。本来は春先に低温に当てれば上から下まできれいに着花するはずですが、弊社では趣味家向けの苗の場合は花を咲かせるための低温処理をしません。低温に当てず苗として管理しているために成熟しきった茎の上部には勝手に花が咲いています。




こちらは最近のオレンジ系品種ですが、やはり茎の上部にのみ着花しています。
既に今年の新芽が古いバルブを追い越しています。バックバルブとなった茎はやはり、いつ低温処理しても良い状態です。本来であれば、この冬に低温に当てても良い株だったはず。



このように改良がすすんだ黄色・オレンジ系品種にあっては低温処理をしなかった場合、次の冬を待てずに不揃いに咲く場合があります。




一方、こちらはかなり古い黄色品種でバックバルブは全く咲く気配がありません。既に十分に成熟していますのですが、次の冬に低温に当たるまでは反応は無いようです。



こちらは30年以上昔の品種、セーラーボーイ‘ピンキー’です。 品種的にはかなり古いのですが、さすがに秋まで着花せずにはせずにはいられないようです。




こうしてみると、まず品種改良により、花芽がつきやすくなったことが大きな要因であるとともに、弊社温室では冬でも夜温を高めに管理し、年間の積算温度が高いためにめ、バルブの成熟が一般家庭より早まったことが考えられます。余程の古い品種、バックバルブ咲きの黄色系品種でも無い限り、一輪も花をつけずに秋を迎えることは難しいようです。
以前にこのブログでも書いたことがありますが、営利生産者の温室での管理は一般家庭より半年近く生育が早いと考えていただくと良いでしょう。



最近の品種改良による花つきの良さを知る例があります。
このバルブは昨年の12月に新芽がスタートした株です。品種はスーパーモデル‘ファンシー’、年末出荷が可能な促成向きの品種です。
6月中旬に止め葉が出た後、低温には当てていませんが、既にバルブは頂部まで完成し、7月上旬の時点で花芽が脹らみつつあります。




しかも上部だけではなくて、下まで揃って花芽がついています。ヒメザクラやスプリングドリームといった低温処理不要な品種だけでなく、今やこのような大輪系のデンドロビュームまで低温不要品種として改良されています。


これは極端に早い例ですが、このままの温度で管理すると約2ヵ月後の9月の上旬に満開になってしまいます。実際には営利栽培の現場では、止め葉の出る時期を調整して、年末贈答用に鉢花需要が増える時期に合わせて開花させるのです。



こうして見てきた事例から、弊社からご購入の場合に夏に花が咲く原因としては一番に花つきの改良によるもの。生育が早すぎて開花する場合と、本来の着花時期を逃したものが、購入時期によってはご自宅で夏に開花してしまう場合があるようです。





デンドロビューム栽培が初めてで、心配された方も多いと思いますが、そのうち、デンドロビュームのほうがご自宅の栽培環境に生育サイクルを併せてくれるはずです。